2008年3月 6日 (木)

膵がんにおけるジェムザール+放射線療法

術後、病理学的に局所進行または転移が認められた膵がんにおいて2つの化学放射線療法を比較した結果、膵頭部がんに限ってはジェムザール®ベースの化学放射線療法が5-FUベースに比べ、全生存率が改善傾向にあったことがJAMA35日号に発表された。

対象

術後、病理学的に局所進行または転移が認められた膵がん 451

比較

1)      ジェムザール®+放射線化学療法

       毎週1回ジェムザール®1,000mg/m23週間投与

       その後、放射線療法(50.4Gy)5-FU 250mg/m2 毎日投与

       その後、毎週1回ジェムザール®1,000mg/m212週間投与

2)      5-FU+放射線化学療法

       毎日5-FU 250mg/m23週間投与

       その後、放射線療法(50.4Gy)5-FU 250mg/m2 毎日投与

       その後、毎日5-FU 250mg/m2 12週間投与

試験デザイン

無作為化比較試験、第III相試験

結果

q  膵頭部がん(n=388)の結果

l  全生存期間:20.5ヵ月(ジェムザール®) vs 16.9ヵ月(5-FU)

l  3年生存率:31%(ジェムザール®) vs 22%(5-FU)

l  ハザード比:0.82(95%信頼区間:0.65-1.03p=0.09)

l  ハザード比(補正後)0.80(95%信頼区間:0.63-1.00p=0.05)

q  毒性(全症例)

l  Grade3以上の全毒性

Ø  79%(ジェムザール®) vs 62%(5-FU)p=0.001

l  Grade3以上の血液毒性

Ø  58%(ジェムザール®) vs 9%(5-FU)p<0.001

l  Grade4以上の血液毒性

Ø  14%(ジェムザール®) vs 1%(5-FU)p<0.001

l  Grade3以上の血液毒性以外の毒性

Ø  58%(ジェムザール®) vs 59%(5-FU)p=0.90

l  下痢

Ø  15%(ジェムザール®) vs 19%(5-FU)

l  粘膜炎・口内炎

Ø  10%(ジェムザール®) vs 15%(5-FU)

l  嘔気・嘔吐

Ø  10%(ジェムザール®) vs 11%(5-FU)

JAMA 2008; 299:1019-1026

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月 1日 (土)

膵がんの術後には化学療法を選択せよ

膵がんの手術後、化学放射線療法でなく、化学療法によって死亡率を減少できることがメタアナリシスの結果、明かになった。この結果はArchives of Surgery1月号に掲載された。また、この解析では顕微鏡で腫瘍が残っているかは否かは生存率に関係がないことも示されている。

対象

手術療法を施行した膵がん 875

比較

q  局所癌遺残度

1)      R0:遺残腫瘍なし n=591(68%)

2)      R1:顕微鏡的遺残腫瘍 n=278(32%)

q  術後化学放射線療法

1)      化学放射線療法あり

2)      化学放射線療法なし

q  術後化学療法

1)      化学療法あり

2)      化学療法なし

解析デザイン

最近発表された4つの無作為化比較試験のメタアナリシス

結果

l  中央値44ヵ月(38ヵ月)の追跡期間において698例が死に至った

l  切除断片浸潤は生存の有意な因子ではなかった

Ø  ハザード比:1.1095%信頼区間:0.94-1.29

l  2年生存率

Ø  33% (R0) vs 29% (R1)

l  5年生存率

Ø  16% (R0) vs 15% (R1)

q  術後化学放射線療法

l  R0に対して19%死亡率が上昇

Ø  ハザード比:1.19(95%信頼区間:0.95-1.49)

l  R1に対して28%死亡率が減少

Ø  ハザード比:0.72(95%信頼区間:0.47-1.10)

q  術後化学療法

l  R0に対して35%死亡率が減少

Ø  ハザード比:0.65(95%信頼区間:0.53-0.80)

l  R1に対して4%死亡率が上昇

Ø  ハザード比:1.04(95%信頼区間:0.78-1.40)

Arch Surg. 2008;143:75-83

 

Oncology1月号には5つのメタアナリシスの結果より、膵がんの術後化学療法によって3ヵ月の有意な生存期間延長と、3.1%5年生存率の改善が報告されている(→詳しくはこちら)

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月16日 (土)

「ブラックジャックによろしく」はもはや昔話か

静岡県がんセンター肝胆膵外科の前田敦行氏らは切除可能膵がんの術後補助化学療法としてジェムザール®療法に対するTS-1®療法の生存期間における非劣性を検証するために多施設共同第III相試験JASPAC-01(Japan Adjuvant Study Group of Pancreatic Cancer)を開始したことを発表した。この内容は212日付けのJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン速報版にて発表されている。主要評価項目は全生存期間。有害事象発生割合、無再発生存期間、健康関連QOLは副次評価項目として評価される。

対象

手術療法を施行した切除可能膵がん 360

比較

1)      TS-1®群:

1コース6週間とし、4コース継続

1コース:180mg/m2(40mg/m212)連日経口投与を4週間投与後2週間休薬

2)      ジェムザール®群:

1コース4週間とし、6コース継続

1コース:1,000mg/m21815日目に投与し、4週目は休薬

試験デザイン

無作為化比較試験、第III相試験

試験名:JASPAC-01

Jpn J Clin Oncol. 2008 Feb 12

 

今回、有用性が検証されるTS-1療法については、週刊漫画雑誌モーニングに掲載された『ブラックジャックによろしく』(2003)の中で採り上げられ話題を呼んだ。この話の中では切除後に肺転移していることが判明した、転移性膵がん患者さんにジェムザールを投与するものの無効。その後の治療として未承認薬TS-1療法の実施の可否について採り上げられた。この試験でTS-1療法の非劣勢が証明され、TS-1が膵がん治療薬として認可されると、『ブラックジャックによろしく』も昔話となる。

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月14日 (木)

切除可能な膵がんの術後補助療法は生存期間を延長させる

切除可能な膵がんの術後補助化学療法によって生存期間が3ヵ月有意に延長することが無作為化比較試験のメタアナリシスの結果より示された。5年生存率は3.1%改善したが、有意な差には至らなかった。この結果は、114日付けのOncology誌オンライン版に発表された。

対象

手術療法を施行した切除可能膵がん 951

比較

1) 術後補助化学療法群 482

2) 対照群 469

解析デザイン

5つの無作為化比較試験のメタアナリシス

結果

l  術後化学療法によって生存期間が3ヵ月延長した

(95%信頼区間:0.3-5.7ヵ月、p=0.03)

l  術後化学療法によって5年生存率が3.1%改善した

(95%信頼区間:-4.6-10.8ヵ月、p>0.05)

Oncology 2007;72:314-321

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 4日 (月)

進行膵がんの腫瘍マーカーCA19-9の治療による低下の度合いは生存期間と相関しない

進行膵がんにおいて、治療開始前の腫瘍マーカーCA19-9は生存期間と有意に相関するが、治療後のCA19-9の低下度は生存期間と相関しない結果が、Lancet Oncology2月号に発表された。

この結果は、進行膵がんの治療において腫瘍マーカーが低下しなかったからと言って、決して長く生きられないというわけではないことを示唆している。

対象

進行膵がん 319例中

治療前の血清CA19-9値が測定されていた進行膵がん 247

治療後の血清CA19-9値が測定されていた進行膵がん 175

比較

q  治療前のCA19-9値における比較

1)      治療前のCA19-9値が中央値以上の群

2)      治療前のCA19-9値が中央値未満の群

q  治療後のCA19-9値における比較

1)      治療後のCA19-9値が前値の50%以下に低下した群

2)      治療後のCA19-9値が前値の50%以下に低下しなかった群

解析デザイン

無作為化比較試験の事後解析

結果

q  治療前CA19-9値別の生存期間の比較

1)      治療前のCA19-9値が中央値以上の群:5.8ヵ月

2)      治療前のCA19-9値が中央値未満の群:10.3ヵ月

Ø  p<0.0001

q  治療後CA19-9値低下度別の生存期間の比較

1)      治療後2サイクルまでにCA19-9値が前値の50%以下に低下した群:10.1ヵ月

2)      治療後2サイクルまでにCA19-9値が前値の50%以下に低下しなかった群:8.6ヵ月

Ø  p=0.53

Ø  下がらなかった群における死亡に対するハザード比:1.1195%信頼区間:0.81-1.52

q  治療後CA19-9値低下度別の生存期間の比較

1)      治療後CA19-9値が前値の50%以下に低下し、かつ底値(nadir)まで低下した群:7.8ヵ月

2)      治療後CA19-9値が前値の50%以下に低下しなかった群:6.7ヵ月

Ø  p=0.74

Lancet Oncol 2008;9:132-138

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月12日 (水)

進行膵がんの2剤併用療法にエルビタックスをさらに追加する必要はない

進行膵がんに対して、ジェムザール®+ブリプラチン®2剤併用療法にエルビタックス®を加えた3剤投与は、2剤併用療法より毒性は強まらなかったものの、奏効率と生存率を改善できなかったことが1210日付けのLancet Oncology誌オンライン速報版で発表された (その後Lancet Oncology1月号に掲載された)。これは第II相試験から得られた結果であるが、著者らはこれ以上有用性を検証するためにこれ以上の試験はするべきではないと結論付けている。

対象

進行膵がん 84

比較

1)        エルビタックス (+)群:エルビタックス®+ジェムザール®+ブリプラチン®

2)        エルビタックス (-)群:ジェムザール®+ブリプラチン®

l  エルビタックス®1回/週投与 導入量250mg/m2、維持量400mg/m2

l  ジェムザール® 1,000ng/m2+ブリプラチン® 35mg/m2

1821日目投与

試験デザイン

無作為化比較試験

II相試験

結果

l  奏効率

Ø  17.5% vs 12.2%

Ø  エルビタックス(+)群で5.3%高かったが有意な差はなかった

l  追跡期間(中央値)11.8ヵ月

l  無増悪生存期間

Ø  3.4ヵ月(エルビタックス(+)) vs 4.2ヵ月(エルビタックス(-))

Ø  ハザード比0.9695%信頼区間:0.60-1.52p=0.847

l  全生存期間

Ø  7.5ヵ月(エルビタックス(+)) vs 7.8ヵ月(エルビタックス(-))

Ø  ハザード比0.9195%信頼区間:0.54-1.55p=0.739

l  両群合わせて33例がgrade3-4の毒性が認められた

Lancet Oncology 2008; 9:39-44

[社説]

転移性膵がんの1st lineとしては、ジェムザール®が推奨されている(グレードA)。しかし、ジェムザール®を中心としたいかなる併用療法も標準的治療法と位置づけるには現時点では十分なコンセンサスは得られていない。Annals of Oncology10月号においてpooled analysisの結果よりジェムザール®+白金製剤はジェムザール®単独療法に比べて無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長できることが示された(詳しくはこちら)

しかし、今回の結果より、ジェムザール®+白金製剤にエルビタックスを追加する3剤併用レジメンは有効性を示すのに失敗した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 5日 (月)

国立がんセンターが「がんワクチン」の臨床試験に着手

111日の読売新聞によると、国立がんセンター中央病院が、難治性膵がんまたは胆道がんを対象に「がんワクチン」の臨床試験に着手するようだ。

対象

切除不能進行性膵がん、胆道がん 1020

治療

WT1ワクチン療法

l  隔週で注射を2ヵ月間

l  化学療法を併用

ワクチン療法は、手術療法、化学療法、放射線療法に比べ、身体への負担や副作用が少ない長所があり、第4の治療法として期待されている。

同センターは、年内にも臨床試験を始め、良好な成績が得られれば、大規模な治験につなげる予定だ。がん治療・研究の拠点である同センターが「がんワクチン」の臨床試験に乗り出すことで、実用化に向けて前進すると期待される。

2007111  読売新聞

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月28日 (日)

進行膵がんにおける2剤併用療法の可能性

切除不能進行膵がんに対して有効なレジメンが求められている。1024日付けのAnnals of Oncology誌オンライン版では、ゼローダ®+エルプラット®、ゼローダ®+ジェムザール®、ジェムザール®+エルプラット®3レジメンは同程度の無増悪生存期間が期待できることが発表された。

対象

進行膵がん 190

比較

1)        CapOxレジメン:ゼローダ®1,000mg/m2を毎日214日間+エルプラット®130mg/m21日目に投与

2)        CapGemレジメン:ゼローダ®825mg/m2を毎日214日間+ジェムザール®1,000mg/m21日目と8日目に投与

3)        mGemOxレジメン:ジェムザール®1,000mg/m21日目と8日目に投与+エルプラット®130mg/m28日目に投与

試験デザイン

無作為化比較試験、第相試験

結果

l  治療3ヵ月後における無増悪生存率

Ø  CapOxレジメン:51% vs CapGemレジメン:64% vs mGemOxレジメン:60%

l  無増悪生存期間(中央値)

Ø  CapOxレジメン:4.2ヵ月 vs CapGemレジメン:5.7ヵ月 vs mGemOxレジメン:3.9ヵ月 (p=0.67)

l  全生存期間(中央値)

Ø  CapOxレジメン:8.1ヵ月 vs CapGemレジメン:9.0ヵ月 vs mGemOxレジメン:6.9ヵ月 (p=0.56)

l  Grade3または4の重篤な血液障害は、ジェムザール®が含まれた2つのレジメンで多く見られ、Grade3または4の重篤な血液障害以外の副作用はどのレジメンも15%ほどであった。

[私説]

切除不能進行膵がんの標準治療は、局所進行例と転移例で異なる。局所進行例では、放射線化学療法の適応となる。化学療法単独の治療については「エビデンスが十分ではないことを患者に説明した上、ジェムザール®による化学療法を選択肢の1つに加えることは可能と考える」程度の推奨に留まっている。

転移例では、ジェムザール®単独療法が一次療法として推奨されている。しかし、生存期間は6ヵ月程度である。このレジメンを上回るものを確立することが急がれている。Annals of Oncology10月号にはジェムザール®+白金製剤(エルプラット®またはブリプラチン®)がジェムザール®単独療法を無増悪生存期間、全生存期間で上回ることpooled Analysisの結果より見出されている(→詳しくはこちら)

Ann Oncol. 2007 Oct 24;

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年10月13日 (土)

ジェムザール®と白金製剤の併用がジェムザール®単剤療法を上回る -進行膵がんの生存期間-

局所進行・転移性膵がんにはジェムザール®単独療法よりジェムザール®にエルプラット®またはブリプラチン®のような白金製剤との併用療法の方が無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長できることがAnnals of Oncology10月号に発表された。本件は同誌の728日付けオンライン速報版にて発表されている。

対象

局所進行・転移性進行膵がん 503

比較

1)        ジェムザール®+白金製剤(エルプラット®/ブリプラチン®) 252

2)        ジェムザール®単独療法 251

研究デザイン

無作為化比較試験のpooled analysis

結果

l  無増悪生存期間はジェムザール®+白金製剤で有意に長かった。

ハザード比 0.75p=0.0030

l  全生存期間はジェムザール®+白金製剤で有意に長かった。

ハザード比 0.81p=0.031

l  パフォーマンス・ステータスが良好(PS=0)な患者群ではその効果はより大きかった。

Ø  無増悪生存期間 ハザード比 0.64p=0.013

Ø  全生存期間 ハザード比 0.72p=0.063

Ann Oncol. 2007 Oct;18(10):1652-9. Epub 2007 Jul 28.

ジェムザール®単独療法は転移性膵がんの標準治療である。しかし、その生存期間は6ヵ月程度と不十分なものであり、これまで、ジェムザール®との併用療法を中心とした数々の無作為化比較試験が行われきた。

ジェムザール®とブリプラチン®との併用については、イタリアで行われた第Ⅲ相試験1)において併用療法(n=53)では生存期間が30週間と、ジェムザール®単剤療法(n=54)20週間よりも長い傾向はみられたものの、明らかに優れた生存期間を示すことはできなかった(p=0.43)。ドイツで行われた第Ⅲ相試験2)では併用療法で7.5ヵ月と、単剤療法の6.0ヵ月に比べると長かったものの有意な差ではなかった